犬にまで噛まれた...!
乳癌とわかったその夕方。
仕事のパートナーでもあり、友人でもある書家と仕事の電話。「検査どうだった?」一瞬息を呑んでから、「乳がんだったの。」
気持ちが辛くて自分では病名を口にすることができないかもしれない、と思っていたので、はっきりくっきり「癌」と発音できた自分に勇気が沸いて、「それでね、お医者さんにこういう風に言われたの。明日は乳房MRI、明後日はPETの検査があるのよね。」と明るく一部始終を報告。(これなら、他の人にもちゃんと話すことができるわ。しめしめ。)
しかし直後に、新たな悲劇が。飼い主の電話中をいいことにキッチンのカウンターから美味しいものをつまみ食いしようとした、大型犬(犬種は、人呼んで「とってもゴールデン」)ジャンを制止しようとしたら、怒って右手をガブリと噛まれてしまいました。
「あー!ジャンに手を噛まれた!」と受話器に向かって叫ぶ私に、友人は「今から、すぐ行くから!」
踏んだり蹴ったりの日だ。癌にはなるは、(正確には、この日になったあ訳じゃないけれど。)飼い犬には噛まれるは。
でもこの時ばかりは、犬を責めるよりも、手の甲の傷を手当するよりも、噛まれた痛みと流れる血をしっかりと感じながら、「私は、まだ生きてるんだ」と心臓から沸き上がるようなものがありました。