「日本のおっぱい」乳がんダイアリー

2011年乳がんになりました。

「困ってるひと」のこと。実は、私も困ってたけど。

まことに、出合いというのは不思議なもの。求めていると、ふっと向こうからやって来てくれることがあります。

別のモノを探していた本箱から、家人がどこからか持ってきた「困ってるひと」(大野更紗著、ポプラ社)がぽろっと目の前に落ちました。「あれ、これ少し前に書評で見て気になっていたんだ」とさっそく手に取り…読み始めたら、予想を超えた内容の深さに一字一句たりともおろそかにできなくて、読み終るのが二日がかりになってしまいました。

この著者には、恐れ入りました。自ら「難病女子」と名乗る27才の行動派才女の病気発病からの一年半の手記です。娘ほど年齢の離れたこの方の絶望的な状況下でも自分を客観視できる知性と、ユーモアで笑い飛ばす風を装いながらも、説得力あふれる文章スタイルと構成力。

私には余りないことですが、思わずファンレターを書きたくなってしまった程です。が、しかし私の稚拙な文章で「あなたの本は素晴らしかったです。」というようなありきたりな手紙をもらっても、ただ迷惑するだけだろうと、もちろん実際には書きませんでしたが。

同じような難病のボーイフレンドができたとき、彼が何も言わず、何も聞かずにそっと泣いている彼女の隣にいてくれるシーンや、お医者とのやりとりで、治療する側とされる側の信頼関係の中にありながらもなお、微妙な気持ちのすれ違いなど、一見あっけらかんと書いているように見えるけど、ここまで書き込めるというのはただ者じゃない才能を感じます。

著者の大野更紗さんのエネルギーは、犬の病気のことで、憂鬱になっている私の横っ面をみごとにひっぱたいてくれました。