「日本のおっぱい」乳がんダイアリー

2011年乳がんになりました。

「Lost in translation」

乳がんは、「乳腺外科」とか「乳腺腫瘍科」といった専門で診てもらいます。当然、待合室にいる患者は、全員乳がん(か、その疑いがある人)で、女です。(実際には、男性の乳がんも1%いるそうですが。)ほとんどの人が、一人で来ています。

1月に病名を知らされて、治療する病院を決める時には、アメリカにいる大学生の息子が急遽二週間帰国、私の専属ドライバー兼アシスタントに徹してくれました。

診察や検査の順番を一人で待っているのは苦痛。今のようにもう治療が決まってしまって、通院もベテランの域に達してしまうとそれ程でもありませんが、最初に五里霧中で何が何だかわからずに不安だけがあった頃には、息子がついて来てくれただけで病院に行くのがどれだけ楽だったかわかりません。

他の人を見てみると、夫やパートナーが付き添っている人もごくわずか。時々、母親や姉妹と思われる親族と一緒の人はいますが、まず「若い息子」は見かけない。そんなおばさま、おばあさまの面々のど真ん中、目立っていることも苦にもせずに一緒に来てくれた彼には感謝です。

しかし、病院でもところかまわず、久しぶりに日本語で喋るのが嬉しいのか、彼は饒舌。
フランシス・コッポラの『Lost in translation』は、面白かった。異文化体験っていうことがすごく、上手に描けていたよ。えっと誰だっけな?日本人のコメディアンで出演してたんだけど、彼がいい味出してた。名前が思い出せない。」
などと、延々と一方的に話し続けているうちに、待ち時間はすぐに過ぎます。

診察室に呼ばれて、一緒にお医者に挨拶する直前「あ、思い出した。藤井隆だ。」と私に小声でつぶやく息子。目の前には、なんと!藤井隆そっくりのお医者。吹き出しそうになる私。ああ、きっと聞こえていましたね。

このドクター藤井は、「はーい。『お胸』をこっちに向けてくださいね。」など、『胸』に『お』をつける方でした。

結局、この病院では治療をすることになりませんでしたが。