「日本のおっぱい」乳がんダイアリー

2011年乳がんになりました。

癌細胞って、なかなか知能犯?

昨日4月25日、我が家の方面では、大きな雹(ひょう)が降りました。ちょうど、昼頃運転して都内に向かおうとしていた時だったので、車のボンネットに氷の粒があたっては砕け、あたっては砕けしてバラバラとガラスのような音がしました。

運転しながら、この二三日は、まるで雪の中を歩いた後に、身体の表面の感覚が鈍くなるような感じがしているなあ、と思っていました。最初は背中などの表面積の大きいところだけでしたが、今日は手指の先や唇、舌の先や口の中も、もやーとした感じです。抗がん剤が効いてきた時の感覚とも似ています。

「これって、もしかして、抗がん剤が切れてきたからかしら?」前回の治療から7週間が経っています。「ヤク切れ?」そういえば、髪の毛も少しはえてきたようですし、黒ずんでいたツメも、新しくきれいな部分が伸びてきました。
わー、早く木曜日にならなくちゃ、がんがまた大きくなったらどうしよう?

友人の間で最もノーベル賞に近い男(!)と評判の天才「く」教授は、大学で癌の基礎研究をしています。彼に「抗がん剤は、どうしてがん細胞を殺せるのに、薬の影響を受けた普通の細胞はまた、再生するの?」と質問したことがあります。以下が彼の答え。私に分かるように、噛み砕いて噛み砕いて説明してくれています。

抗がん剤は、癌細胞の増殖を阻止するものであれば、たいがい正常細胞の増殖を阻止します。増殖している細胞を殺すものであれば、増殖している癌細胞も正常細胞も死ぬと思います。ただ、一般に癌細胞の増殖は速いので「より被害を受ける」ということだと思います。それから、正常細胞は、もともとが「必要に応じて増殖するようにプログラムされている」ので、毛根や小腸上皮では、たとえ抗がん剤で被害を受けても、抗がん剤治療が終われば、またそのプログラムに従って残っている細胞が増えてくるのだと思います。

癌細胞は、正常細胞が制御不能になり暴走している細胞なので、正常細胞と同じ仕組み(いろいろな部品を駆使して)で増殖します。理想的には、癌細胞にだけ存在する「部品」を見つけて、その部品の機能を阻止するような薬剤を開発すれば、癌細胞だけを殺す抗がん剤を作ることができるかもしれないのですが、そういうわけで(癌細胞と正常細胞はほとんど同じ部品を持っていますので)、癌細胞だけを殺すような抗がん剤開発は難しいのです。ただし、抗がん剤によっては、癌細胞内により多く存在する「部品(正常細胞にも存在するのですが)」をターゲットにしているので、癌細胞の被害は甚大になります。

癌細胞を薬剤で殺すのは案外簡単ですが、癌細胞だけを殺すのが難しいのですね。』(原文のまま)

「癌細胞は、正常細胞が制御不能になって暴走する細胞である。」という部分が気に入りました。自分自身で作る病気なんだなあ。「誰のせいでもない、自分で作ったんだから仕方ない」とあきらめたら、気が楽になりました。

2月の大雪の日、木曽漆器の伊藤猛巨匠(長野オリンピックの漆のメダルの制作者)にアンティークの重箱の修理を頼んだ。少しだけでも、先のことを楽しみにと「完成は急がないから」とお願いした。あの頃に比べると、今は随分と前向きだ。